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MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)とは?特長・分析手順・活用ポイントなどを解説

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MMMでデータに基づいたマーケティング戦略を策定!
事業成長には、費用対効果の高いマーケティング戦略の策定が不可欠です。しかし、様々なマーケティング施策の効果を測定し、限られた予算を最適に配分することは容易ではありません。そこで注目されているのが、MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)です。MMMは、統計的手法を用いて様々なマーケティング施策の効果を分析し、データに基づいた意思決定を支援します。
この記事では、MMMの基本概念から仕組み、活用のポイントを詳しく解説していますので、ぜひ最後までご覧ください!

1. MMM(マーケティング・ミックス・モデリング)とは?

MMMは、テレビCM、Web広告、SNS、チラシなど、様々なマーケティング施策がどのように貢献しているかを定量化する統計学的な分析手法です。どの施策がどれくらい効果を生んでいるかを数値化することで、投資対効果(ROI)の最大化を目指します。

MMMの特徴

MMMの最大の特徴は、マーケティング施策の効果を数値化し、多角的に分析できる点です。売上への直接的な貢献度(直接効果)だけでなく、施策同士の相互作用による相乗効果(シナジー効果)や共食い効果(カニバリゼーション効果)といった間接効果も定量的に把握する事が可能です。

MMMのメリット

従来のマーケティング手法では、経験や勘に頼った施策決定になりがちでしたが、MMMはデータに基づいた客観的な意思決定を可能にします。これにより、ROI(投資対効果)の最大化マーケティング活動の透明化将来の売上予測といったメリットが得られます。

2. MMM分析の手順

1) 分析ロジックを決める

まず、分析の目的を明確に定義します。例えば、「新規顧客獲得数の最大化」「売上高の向上」「ブランド認知度の向上」など、具体的な目標を設定します。次に、その目標達成に影響を与える可能性のある要因を洗い出し、それらの要因間の関係性を仮説として立てます。例えば、「テレビCMへの投資を増やすと、ブランド認知度が向上し、新規顧客獲得数が増加する」といった仮説です。この仮説が分析のロジックとなります。使用するデータの種類や分析手法もこの段階で決定します。

2) 内部要因と外部要因を洗い出す

設定した分析ロジックに基づき、分析対象の事業に影響を与える内部要因と外部要因を網羅的に洗い出します。

  • 内部要因: 自社のマーケティング活動に関する要因です。具体的には、各メディアへの広告支出額、広告クリエイティブ、webサイトのアクセス数、商品価格、販売チャネル、プロモーションの実施状況などが挙げられます。コントロール可能な要因です。
  • 外部要因: 自社ではコントロールできない外的要因です。具体的には、マクロ経済指標(GDP成長率、消費者物価指数、失業率など)、季節要因、競合他社の活動、市場トレンド、社会情勢、天候、自然災害などが挙げられます。

これらの要因を洗い出すことで、売上変動の要因分析をより精緻に行うことができます。ブレーンストーミングや関係者へのヒアリングを通して、漏れがないように注意深くリストアップすることが重要です。

3) 顧客の購買行動のモデル化

内部要因と外部要因を特定したら、顧客の購買行動をモデル化します。これは、どの要因が顧客の購買プロセスにどう影響するかを理解するための重要なステップです。パス図などを用いることで、要因間の関係性を視覚的に表現しやすくなります。

顧客の購買行動モデルは、分析対象の製品・サービスによって異なります。有名なAIDMA(アイドマ)モデル(注意・関心・欲求・記憶・行動)は一般的な購買行動を捉えたものですが、必ずしも全てのケースに当てはまるわけではありません。高額商品や複雑なサービスの場合、検討段階が長くなり、より詳細なモデルが必要となるでしょう。

分析対象に最適なモデルを構築するために、例えば「テレビCMは認知度向上に寄与し、Web広告は購買意欲を高める」といった仮説を立てます。次に、洗い出した内部要因・外部要因を、顧客の購買プロセスにおける各段階に紐づけます。例えば、「景気動向(外部要因)は購買意欲に影響する」「価格設定(内部要因)は購買決定に影響する」といった具合です。この際、要因の漏れや重複がないか関係者へのヒアリングなども行いながら慎重に確認しましょう。

このステップで作成した購買行動モデルは、後続のデータ収集や分析の指針となります。精度の高いモデルを構築することで、より効果的なMMM分析が可能になります。

4) データを収集する

洗い出した内部要因と外部要因に関するデータを収集します。データは、過去の一定期間にわたって収集する必要があります。データの収集期間は、分析の目的に応じて適切に設定します。例えば、季節変動の影響を分析する場合には、少なくとも1年間のデータが必要となります。データソースとしては、社内のデータベース、広告プラットフォーム、市場調査会社などが挙げられます。データの精度と信頼性を確保するために、データソースの選定には注意が必要です。

5) 分析をする

収集したデータを用いて、分析ロジックに基づき分析を行います。一般的には、回帰分析などの統計的手法を用いて、各要因が売上に与える影響を定量的に評価します。例えば、回帰分析を用いることで、各メディアへの広告支出が1単位増加した場合に、売上がどれくらい増加するかを推定することができます。分析結果を可視化するために、グラフや表を用いると効果的です。

6) 分析精度を向上させる

分析結果の精度を向上させるためには、以下の点に注意する必要があります。

  • データの質: データの精度が低いと、分析結果の信頼性も低下します。データのクリーニングや欠損値の補完など、データの前処理を入念に行う必要があります。
  • モデルの選択: 分析の目的に合わせて適切なモデルを選択する必要があります。例えば、時系列データの分析には時系列モデル、顧客の購買行動の分析には顧客生涯価値(CLV)モデルが適しています。
  • 外部要因の考慮: 外部要因の影響を適切に考慮することで、分析結果の精度を向上させることができます。例えば、季節変動の影響を除去するために、季節調整済みのデータを使用するなどの工夫が必要です。
  • 専門家との連携: MMMは高度な統計知識と分析スキルを必要とするため、必要に応じて専門家と連携することが有効です。

3. MMM活用のポイントと注意点

消費者調査やログ分析との違い

MMMを最大限活用するためには、一般的な「消費者調査」や「ログ分析」との目的の違いを意識し、それぞれの分析手法の特長を理解・使い分けることが重要です。

消費者調査は、広告などによる消費者の心理変化を捉えるのに有効です。例えば、広告出稿前後の消費者調査を実施することで、製品やサービスに対する好感度、認知度、購入意向、第一想起などの変化を把握できます。これにより、「広告メッセージは正しく伝わっているか」「消費者は想定通りの反応を示しているか」といった疑問を検証できます。

しかし、消費者調査では、マーケティング施策が売上にどれくらい貢献したかを定量的に示すことはできません。消費者の心理変化を捉えることはできても、実際のビジネス成果への影響までは測定できないのです。

ログ分析はwebサイトやアプリのユーザー行動を記録・分析する手法です。ページ閲覧、クリック、滞在時間などの情報を分析し、顧客の行動パターンやサイト上の問題点を特定します。ユーザーがどのページを閲覧したか、どのボタンをクリックしたか、どのくらいの時間滞在したかといった情報を分析することで、顧客の行動パターンやwebサイト上でのつまずきなどを特定できます。

ただし、ログ分析単体では、オンラインデータのみに限定されるため、オフライン施策を含むマーケティング全体像の把握には不十分です。

MMMは、これらの手法とは異なり、マーケティング施策の売上への貢献度を定量的に分析します。例えば、「テレビCMの視聴率が3%上昇すると、売上が100個増加する」といった関係性を明らかにすることができます。消費者の心理変化を直接的に捉えることはできませんが、施策の効果を売上という具体的な指標で評価できる点がMMMの強みです。

MMMでできること・できないこと

MMMは強力な分析手法ですが、万能ではありません。MMMでできること、できないことを正しく理解し、適切に活用することが重要です。

MMMでできること:

  • 各マーケティング施策の売上貢献度を定量的に評価
  • 施策間の相乗効果や共食い効果を分析
  • 最適な予算配分をシミュレーション
  • 費用対効果の高いマーケティング戦略を策定

MMMでできないこと:

  • 消費者の心理変化を直接的に把握
  • 個々の顧客の行動を詳細に分析
  • 未来の市場環境変化を完全に予測

MMMは、費用対効果の向上、予算配分の最適化、そしてマーケティングROIの最大化を実現するデータドリブン・マーケティングの強力なツールです。消費者調査やログ分析など、他の分析手法と組み合わせることで、多角的な視点からのマーケティング活動評価を可能にし、より効果的な戦略策定を支援します。

変化の激しい市場環境で競争優位性を築くには、データに基づいたマーケティング戦略の最適化が不可欠です。MMMを活用すれば、各マーケティング施策の効果を定量的に把握でき、例えばテレビCMの出稿量最適化や、web広告とSNSキャンペーンの相乗効果分析による統合マーケティング効果向上など、予算配分を最適化できます。最適な分析手法を活用したデータドリブン・マーケティングで、持続的な成長を実現しましょう。

「テレシー」は本記事でご紹介したポイントを踏まえ、クライアント企業の課題に対して、運用型テレビCMを軸とした統合的なマーケティング・コミュニケーションサービスを提供しています。戦略策定からCMクリエイティブの企画制作、メディアプラニング、効果分析まで一気通貫して、クライアント企業に伴走し事業成長に貢献します。

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